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提出された議案の「平成10年度(98年度)事業計画案」では、理事会内に「振込賃料3倍化実行委員会」を設置して、大規模修繕計画の骨子と費用の検討を含めて計画を練り上げる、と議案書では、こうした実績をグラフを以て示した。
「理屈ではなく、管理・運営した結果の具体的な数字で実績を示すことができるようになったのが、この第6回総会あたりから。
それまでは、どちらかといえば、考え方とか、できるはずだという可能性で、組合員の団結を図っていた。
数字として具体的成果を報告できるようになって、団結するのも、非常に楽になった」と、Mは振り返る。
もっとも、再生できればできたで、それに伴う新たな問題も生じる。
転売などに絡んで悪徳不動産屋が横行しはじめた。
不況の恒常化を背景に、競売、転売が目立って増え、管理費、修繕積立金の滞納や、新たな所有者とのプール制をめぐるトラブルが発生していた。
これらに対応するため、管理組合は、新たな所有者については、プール制の加入を義務づけこれらの難事業を遂行するには、より高度な管理・運営の知識が必要とされてくる。
実務の多くを管理運営会社に委託していては、管理運営会社の恋意的な管理・運営を許しかねない。
管理・運営権の実態を確保するためには、理事会自身が、高度な管理・運営のノゥハゥと、執行できるだけの能力を持つ必要があった。
管理組合はこうした課題を抱えつつ、新たな目標実現に向かって歩き出した。
大規模修繕と振込賃料の2倍・3倍化。
いずれも一朝一夕で実現できるものではない。
次の第7回定期総会(99年6月27日)を越えて2年、3年越しの懸案となった。
理事会は98年9月、第6回定期総会の決議に基づいて「振込賃料2・3倍化実行委員会」を発足させ、2つの問題の検討に入った。
Cの修繕は、竣工以来10年間、ほとんど放置されている。
Rは修繕積立金さえ使い込んでいたのだ。
それだけに、大規模修繕をいつどの規模でやるか。
この課題は、その後の管理・運営に極めて重大な影響を及ぼす。
規模については、一つの基準があった。
高層住宅協会の「指針」である。
だが、それに基づく修繕計画で費用をコンピュータ試算すると、以後20年間で約42億円という数字が算出された。
これでは、一室当たり月2万4000円余の負担になる。
入居者から得る賃料の約2分の一が修繕積立金に消えてしまい、2倍・3倍どころか、それまでに確保した振込賃料の振込さえおぼつかない。
過剰設備の廃棄も進めた。
立上げ直後に行った水道管の変更に続き、今度は非効率的な配電装置「キュービクル」を廃止し、個別の電力供給体制に切り替えた。
これも年間500万円の経費節減に繋がった。
振込賃料の増額は、第6回総会ですでに各室月2000円アップを実現している。
第6回総会で全室のエアコン交換とプール制加入室の全面リフォームが決議され、実行に移された。
費用はオーナーに負担させることなく、管理組合の会計予算で捻出した。
その経費分を割り当てると、実質振込賃料は月額平均一万9800円に達する。
以上の実績を基に第7回総会では、2000年4月に振込賃料を2倍化する方針を示した。
大規模修繕については、当面、建物の資産価値の維持の根源にかかわる外装・外壁の大規模修理のほか、鉄部の錆止め、外壁・屋上の防水の点検・修理に着手。
経費は2億4000万円。
そこで大手ゼネコンに依頼。
「目視」による見込額を算出してもらうと、約20億円。
それでも巨額である。
「長期修繕計画試案」を作成し、慎重に検討した。
かたわらで、管理・運営費の節減にも取り組んだ。
割高とわかった管理会社Kとの包括的な管理委託契約を解消。
「大成サービス株式会社」と、F社から名称更した「株式会社C物件買取機構」に分離発注。
これで年間1000万円を節減した。
それでいて、それまで問題になっていた深夜の警備問題も解決し、24時間常駐体制工事は、99年7月スタートし、2月末には終了した。
「C八王子」は、装いも新たに2000年を迎えたのである。
4月実施予定の振込賃料の2倍化は、折からの不況で賃料相場が急落し、実現は微妙である。
また、A・B・C3棟の一階部分を占める、破産管財人物件となっていたR所有の専有部分は、競売にかかり第3者の手に渡れば、新たな不心得者が出る恐れがある。
一億数千万円の資金が必要とされる該当物件の処置が、残された大きな課題である。
「物件を正常化し、それを活用して収入が得られるようになれば、振込賃料の2倍、3倍化もおのずと可能になる」生は、その課題を解決した時を以て初めて、「C八王子」の自立を宣言でき立上げ、再生、そして自立へ。
この課題は、C社の不法占拠を排除する闘いにも増して困難な事業だった。
事業に着手した当時の状況を考えると、今日の姿は、それこそ「奇跡」と形容しても差し支えない。
「奇跡」の実現は、プール制を抜きに語れない。
すでに折々に触れたように、「新C管理規約」は、プール制を次のように定義している。
「所有者がCの管理の安定化と資産価値の維持・向上のために自らの所有物件の賃貸運営を管理組合法人に委託する制度」(第2条の用語の定義)そして第32条から39条までを第3章として「プール制」の規定にあてている。
第24条に定義された「プール制の意義」は次のようなものだ。
多少長いが、全文を紹介しよう。
「Cは他に類のない複合大型賃貸分譲マンションであり、その商品性の維持・管理および全体運営は、多額の管理費用と高度の能力が必要である。
また、全国に住む500人にもおよぶ所有者によって区分所有されているので所有者ごとに賃貸を行えば、賃借人の募集、賃料の設定、入居手続き、賃料の集金、維持・管理・補修等の不統一が生じてしまう。
専有部分にガス、水道のメーターがなく、共用部分の公共料金と専有部分の公共料金を管理組合法人が一緒に支払わなければならない構造になっている。
その上、所有者が誰も住んでいないので、自己居住用マンションと異なり、共同で管理することの認識が薄れがちである。
これらのCの客観的な存在形態によりプール制以外の管理・運営方法では、管理費の徴収経費と回収リスクをともない、正常な管理を安定的に行うことは困難となり、急速にCの商品性が損なわれ、C全体のイメージの低下をきたす。
プール制の意義は、共存・共栄・共済の理念にもとづきこの危険性を所有者全員で構成する管理組合法人による統一された一元的管理・運営によって補い、最小の管理・運営経費でより良い管理環境と商品性の向上をもたらすことにより、所有者の最大利益を長期的展望に立ち安定的に実現することにある。
「プール制C八王子」が置かれた特殊な事情から必然的に導き出された唯一無二の運営方法である。
プール制導入を強力に推進したMは言う。
立上準備基金を拠出し、まだ少ない振込賃料に甘んじながら、管理組合に参集するオーナーたち。
だが逆にいえば、そこには、明らかな意識の変化が読みとれる。
不動産所有権者としての責任の自覚だ。
管理組合が物件を預かり。
一元的に管理運営し、賃料を振り込む。
どこかでみたシステムである。
そう、販売した物件の賃貸借契約を結び、「配当」と称して一定の賃料を支払うというRのシステムである。
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